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「ホップステップだうん!」Vol.199が配信されました。

今号の内容
・巻頭写真 「浦河港」 江連麻紀
・続「技法以前」171 向谷地生良 「弱さの合意」
・ 「いかりは膝に来る」宮西勝子
・なおのん便り 「新型コロナ」
・福祉職のための<経営学> 061 向谷地宣明 「非独占」
・ぱぴぷぺぽ通信(すずきゆうこ)「感染症委員会 会長就任」


浦河港

ニューべてるとカフェぶらぶらのちょうど真ん中くらいの位置にある浦河港。
今年は非開催ですが、昨年まで毎年8月に浦河港祭りが行われ、浦河町民も馴染みの深い場所です。

べてるのメンバーにどんなときに浦河港に行くのかインタビューしました。
「散歩で気晴らしに行って、ジュースの飲みながらふけってる。」
「子どもが小さい時、噴水で水遊びした。」
「海に吸い込まれそうで怖くて行かない。」
「港でヨガをすると気持ちいいよ!」

メンバーと早朝ドライブで立ち寄ったときの写真です。
潮風のなかで深呼吸してからべてるの朝ミーティングに参加しました。

(写真/江連麻紀)


続「技法以前」171 向谷地生良

「弱さの合意」

前回は、カントの「純粋理性批判」を引用して、難解と思われる哲学は、一環して「人間の認識と行為」の意味を考える人間の営みとして、実は私たちにとっても身近なテーマを扱ってきたこと、それは、今日の当事者研究とも非常に相性のいい領域だということを紹介しました。そのカントに影響を与えた哲学者にD・ヒューム(1711 – 1776)がいます。ヒュームは「人間が持っている全ての知識はどこから生まれているのか?」を考える上で「人間の知識は知覚経験から生まれている」と考えました。これを「経験論」といいます。

もちろん、人間の認識と行動は、どこまでが「本能」(合理論)で、どこからが「経験」によって培われたものか、というのは難しいところがありますが、ヒュームは「人間とは知覚の束」であり、「私」という人間は、これらの感覚(五感)が集まったもの」と考え、何と人間の「自己同一性」(例・28日で新たな細胞に入れ替わる人間は、1年前の自分と今の自分は同じと見なしてよいのか)を疑うという問を投げかけています。当事者研究でも、私たちの「五感」の危うさが、テーマになりますが、同じような議論は、すでに250年以上前からあったということは、本当に驚きです。ヒュームの経験論には、その他、重要なキーワードがありますが、今回は割愛します。

いづれにしても、人の「認識と行動」は、そもそも不確かなものであり、「正しい認識」「誤った認識」という二者択一では割り切れないものであるという理解が必要です。しかし、いつしか人間は、科学的(数字で表すことができるもの)に検証できたものを「正しい」と考え、そうでないものを「非科学的」と考えるようになり、いつの間にか、そこから「健常」と「障害」、「正常」と「異常」などの区分を用いて人を仕分けするようになったのです。

半年前から、チームをつくって一人の統合失調症を持つ若者のサポートをしています。その方は、小学校の時から“幻聴さん”(嫌われてるよ、臭いよと呟く)に振り回され、“幻聴さん”の声に合わせて行動するために、日常生活では、ことごとく周囲とぶつかり合い、それがいじめにもつながってきました。そして、最後には家族も抱えきれずに放りだす羽目になり、大人になってからは、まるで放浪するような生活を続けてきた人です。このようなエピソードを抱えた人たちは、「病識の無い人」として扱われ、入院しても薬物療法に反応しにくい分、薬も多くなりがちで、入院中も「〇〇さんが私を嫌ってる・・」などと言う声に振り回され、早期に退院となり、医療からも遠ざかる傾向があります。池袋のホームレス支援の現場で知り合った路上生活を続ける60代、70代の人たちにも、同じような背景を感じることがあります。

私たちの関りのポイントは、約束したこと、お互いに確認し合ったことが、しばしば“幻聴さん”によって反故にされ、上手くいかなかったとしても苛立たず、“機嫌よく”伴走を続けるということです。「このままだったら、信用を失うよ」とか「がっかりした」という役割は、“常識ある”周囲の人に任せて、チームは、淡々と「応援団」を続けることで、本人の「認識と行動」の柱が、“幻聴さん”から、「私たちとの関係」の中に移行し、応援団は、本人にとって自分の立ち位置を見極める「灯台」のような存在になります。そうすることによって、徐々に“幻聴さん”との適切な距離が生まれ、「振り回され行動」が減ります。

半年たって、ようやく“幻聴さん振り回され状態”から、「いま、大切なこと」を基準とした認識と行動がとれるようになってきました。このような伴走型の支援に必要なのが、本人とチームの中に、お互いがそれぞれ不確かであり、支え合う必要がある存在であるという信頼に基づいた「弱さの合意」です。この応援プロジェクトは、今後も、継続的に本人も交えて「共同研究」を続けて行く予定です。

向谷地生良(むかいやち・いくよし)
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わった。浦河赤十字病院勤務を経て、現在は北海道医療大学で教鞭もとっている。著書に『技法以前』(医学書院)、ほか多数。新刊『べてるの家から吹く風 増補改訂版』(いのちのことば社)、『増補版 安心して絶望できる人生』(一麦社)が発売中。


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