オランダ・エルメロ 視察ツアー

日本人にとって、オランダは縁の深い国だ。

江戸期にプロテスタントのオランダ人は制限付きで交易が許された。長崎の出島の広さはわずか数千坪、滞在していた人数も少なかった。

それでもその影響は計り知れないものだったらしい。医学や科学技術はもちろん、経済においても合理主義的な考え方が広まるきっかけとなった。

飛行機のなかでそんな日蘭の歴史に思いをめぐらせながら、香港を経由してアムステルダムに向かった。

アムステルダムの空港にて

オランダは英語で「Netherland」だが、「低い土地」という意味なのだという。

「世界は神様が創ったけれど、オランダはオランダ人が創った」と言われるほど、オランダの土地は海抜以下が多く、干拓で長い時間をかけて人が土地を生み出していった。

同時に、「オランダ人は祖先をもたない」「外国人を差別しない」とも言われるらしい。もともとヨーロッパ中から人が集まってきてできた国ということもあり、自由と寛容の国として知られている。

干拓されて農地になった土地

今回は、オランダのエルメロ市を視察するために、日本から7人で向かった。
エルメロは、メーヤカンテンという施設を中心として形成されていった町だ。

人口は約2万人で、なかでも医療関係の仕事をしている人はとりわけ多く、観光地としてもオランダでは有名なのだという。

エルメロでは、メーヤカンテンの他、デイケア、作業所、共同住居、当事者の働くカフェやアートギャラリーなどの各施設が市内に点在している。

エルメロ市
メーヤカンテンの入り口にある地図

メーヤカンテンは、かつては周りをフェンスで囲まれた精神科の病院であった。その後、フェンスが取り除かれ、地域に解放され、エルメロの市街地にデイケアや共同住居ができていったほか、メーヤカンテンの敷地内にも一般住宅が建てられ、地域との統合が行われた。

オランダの精神保健の取り組みの歴史を聞くと、そもそもの考え方、援助観が日本とは大きく違うということを痛感する。

1900年代、日本では家のなかに座敷牢をつくり、そこに患者さんを閉じ込め、警察が各家庭を巡回していた時代、エルメロでは退院する患者さんを地域の一般の家庭が受け入れるという仕組みがはじまったという。専門家が各家庭をまわって支援をし、当事者を受け入れた家庭には国がお金をだすのだという。日本では、おおよそ考えつかないシステムだ。

病院の本部棟
精神科病棟(とてもキレイでうらやましい)
敷地内にあるカフェテリア
共同住居
共同住居2
メーヤカンテンにある一般住宅
メーヤカンテンにあるマンション(価格は億単位らしい)
街のなかにあるデイケア
デイケアのなか
デイケアのミーティングルーム
エルメロにある作業所
メーヤカンテンとは別の団体
丸太を薪にして売っている

福祉の取り組みで有名なスウェーデンなどの北欧の国と、オランダのような大陸ヨーロッパでは、同じ高福祉高負担でも違いがあるという。

スウェーデンなどの北欧の福祉が国や政府(パブリックセクター)に頼っているのに対し、オランダなどでは非営利組織、市民団体、企業などが大きな役割を担っていると言われている。多様な組織が地域のコミュニティ内の福祉に関わっていくことで、多様な市民ニーズに応えていけるのだという。ヨーロッパが目指しているのは、従来型の「大きな政府」に代わる「大きな社会」という考え方だ。

いずれの場合も、社会保障費や消費税などは高く、オランダも一般消費税率は19%である。それは急にそうなったわけではなく、20年以上かけて徐々に上がってきていて、これからも更に上がり続けて、20%を超えることは避けられないという。

2030年には、人口1600万人のオランダの人口のうち65歳以上が全体の25%以上(400万人)を占めるようになり、就労不能になった人のための保険給付対象者も600万人を超える見込みであるという。とっても大変だ。
ちなみに生活必需品の消費税は6%に抑えられている。しかし、そのラインナップがすごい。食品、水、医薬品、整髪、自転車整備費(オランダは自転車社会)とここまでは理解できるが、芸術品、骨董品、美術館、博物館、演劇なども「必需品」としてカウントされているのはゴッホなどを生んだ芸術の国オランダならではかもしれない。

市街地にある当事者が働くカフェ
当事者の雇用創出のために地元の企業と市が出資し合ってつくられた
カフェの屋外スペース
店内のデザインが洗練されていてすごい
キッチンのあるカウンター
設備もハイテク
コーヒー、紅茶の棚 オシャレですねー
食器などのグッズも充実している
10名程度の当事者が働いているという
メニューもサンド系を中心に充実している
アトリエ「レオナルド・ダ・ヴィンチ」
メーヤカンテンなどとは独立して運営されている
全体的にレベルが高い
主に作品の販売、レンタルをおこなっている
アトリエでオランダの皇太子を描く男性

メーヤカンテンで精神科医の先生から話を聞くと、特に倫理面にとても気をつけていることが分かった。例えば、日本でよく言われる薬の多剤多量についてもとても敏感で、原則的に行わない。常に他に方法はないかと考える。一時的に隔離が必要な場合も、行政の法的許可が必要で、申請するとその運用方法について監査を受ける。現在では、隔離措置そのものについても議論になっているという。

また、広大な敷地があるメーヤカンテンを歩いていると、いわゆる白衣を着ている人はいない。医者も看護師も白衣を着ていないので、誰が何の人かはよくわからない。それこそ、職員なのか患者なのかも。唯一白衣を着ていたのは、食堂で働く人たちだった。

メーヤカンテンについて詳しくレクチャーを受ける
説明してくれた精神科医の先生

エルメロ市はメーヤカンテンと共に発展してきた。今では、軍の施設や観光も地域を支える資源となっている。

エルメロの市長さんは「メーヤカンテンはエルメロの誇りです」と言っていた

エルメロの市長さん
オランダでは選挙で市長を選ぶのではなく
女王さまに任命されてやって来るのだという
権力もあるけど、権威もある

全日程においてエルメロを案内してくれた
メーヤカンテンのソーシャルワーカーのアレックスさん
本当にありがとうございました


投稿者: bethel-net