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特集
噂の非定型抗精神病薬ジェネリック医薬品を検証
国の認可制度に問題あり!?




2007年夏、非定型抗精神病薬『リスペリドン』のジェネリック薬品が発売された。
インターネットで確認できただけでも、11社から発売されている。リスペリドンは、浦河で最も使われている薬のひとつで、統合失調症の苦労を抱えるメンバーを中心に広く服用されている。ジェネリック医薬品の登場で、医療費を安く抑えられるとの期待がある一方、服用する側にとって最も大事な「飲み心地」がだいぶ違うという話しも聞く。
その本当のところはどうなんだ!?という疑問から、主治医や薬局に突撃取材も敢行。エンドユーザーである当事者の視点から取材を試みた。
(写真は、泉奈津子さんと清水里香さん。手にはリスパダール。)


—そもそもジェネリック医薬品って何?

ジェネリック医薬品については、「同じ成分で、安い」というイメージが一般的。テレビCMでは黒柳徹子が「勇気を〜だして〜明日を変えよう〜♪」と宣伝していることでもおなじみ。医療の現場でも、2002年の医療制度改革によって診療報酬が改定され、後発医薬品調剤加算といってジェネリック医薬品の使用に1調剤につき2点(20円)のインセンティブがつくようになった。
現在、日本の医療費は32兆円超。うち、国庫(税金)で支えている分は、約8兆円。残りは、自己負担と保険料。よくやり玉にあがる公共事業費が約7兆円だということを考えると、医療費が国の予算のとても大きな部分(約10%)を占めていることが分かる。その医療費のうち、薬剤費は約6兆円。もし、日本人が欧米並みにその50%をジェネリック医薬品に代えると、約1兆円を節約できるという試算がある。厚生労働省としては、ぜひとも進めたい政策のはずだ。


—いろいろ言われているけど、「効果は同じ」は信じていいの?

国がお勧めするジェネリック医薬品。しかし、不信感が根強いという「噂」も聞く。それは、患者よりもむしろ医療現場の専門家に多い。この点の本当のところを薬剤の専門家である政田幹夫教授の講演会(in 幕張)に直に足を運び、聞いてきた。


政田幹夫氏(福井大学教授・医学部付属病院薬剤部長)
写真:「ジェネリック医薬品の今」より

「一般に、先発医薬品と同じで安い薬として知られるようになったジェネリック医薬品ですが、その“同じ”の意味、“同等性”をどう定義しているかが問題なのです。——先発医薬品の物質特許が切れれば多くのメーカーはそれと同じ有効成分で、同じ化学構造式を持つジェネリック医薬品を作ることができますが、製造方法や主成分以外の添加物は各社で違いがあるのです。すなわち、物質特許が切れたのみで、製法・製剤特許は残っているので、まったく同じものはできないのです。」

政田教授によると、「特許」には、「物質特許」(化学構造式)、「製法特許」(つくり方)、「製剤特許」(添加物等)があるということだ。物質特許が切れ、後発薬メーカーは同じ化学構造式を持つ薬を製造できるが、製法などはマネできないということらしい。しかし、それはどの程度の差になって表れてくるのだろう。素人にはよくわからない。この点を、政田教授はリポ化製剤という薬で説明する。

「リポ化製剤は標的治療といって、血管の障害を起こしている部分に、脂肪微粒子(キャリアー)に薬物が封入された製剤がターゲットするというものです。去年(2006年)の日本臨床薬理学会で、キャリアーに大豆油を使った先発薬とオリーブ油を使ったジェネリック薬では、血管障害等が違うという報告が出されました。大豆油で作った先発薬は科学技術庁長官発明賞をもらった優れた製剤です。大豆油にはターゲティングの論文はありますが、オリーブ油でターゲティングの論文はないと思います。添加物やキャリアーが変われば、製剤的に異なる品質になる可能性がある点で注意が必要であると思います。」

なるほど、薬の種類によっては先発薬と後発薬では品質に異なる部分がでてくるということだ。しかし、それは一般の人にはとても判断できるレベルではない。これでは、CMで黒柳徹子が勧めるような「ジェネリックでお願いします」なんて言えない。それでは、国の認可基準が甘いということなのか。ますますわからなくなってきた。


—薬の同等性をめぐる問題

「ジェネリック医薬品の場合、錠剤やカプセル剤のような経口投与剤の同等生については、2つの試験方法があります。1つは溶出試験、1つは血中濃度測定から評価する生物学的同等性の判定、この2つをクリアしていれば承認申請は通ります。溶出試験では、ジェネリック医薬品は先発医薬品の平均溶出率の±15%以内になくてはならないとされています。しかし、±15%以内という範囲は、実際にはかなり広い範囲と言えるでしょう。一方、生物学的同等性については、同等判定パラメーター対数値の平均値の差の90%信頼区間がlog(0.8)からlog(1.25)の範囲内に入っていなくてはならないのですが、実際にはこの範囲のなかでは大きなばらつきが見られるのです。——いわゆる生物学的同等性試験を通った製剤でも、これだけのばらつきが許容されていることを、まず頭に入れておいていただく必要があると思います。」(政田氏)

ますます、素人には難解になってきた。利用者側としては、単純に安心して利用できるようにしてほしいということだと思うが、どうもそれが国の承認基準では担保されていないような感じがする。そこが、ジェネリック利用率が50%を超える欧米との違いなのではないだろうか。日本の問題点について、政田氏はジェネリック医薬品の専門機関が必要だと言う。

「(日本と)大きく違うところは、アメリカではFDA(食品医薬品局—米保健社会福祉省に属する機関)のなかにジェネリック医薬品を専門に規制する当局がありますが、日本にはそれに該当する機関がないところです。そのため、アメリカでは1つの先発医薬品に対して数種類のジェネリック医薬品しかでてきませんが、日本では30種類くらい出されているものもあります。これは日本の製剤技術がアメリカよりも単に優れいているからとは考え難いようです。——アメリカではジェネリック医薬品局が常に一定のルールに基づいて審査、ヒアリングを行うことで、予備的なふるいがかけられ、優れた製剤だけが市場に出回る仕組みになっているはずです。日本でも、同様の働きをする専門機関を、できるだけ早くつくる必要があると思います。」(政田氏)


—浦河ではどうなってるの?

ジェネリック医薬品とは何かがだいたいわかってきたところで、浦河で活動するべてるのメンバーに聞いてみた。べてるの機関紙の封入作業をし終わって、やれやれと帰るところを無理矢理引き止めて質問した。

Q: ジェネリック医薬品を使っている人は?
A: 0人

と、誰もいなかった。
「ジェネリックを使ってみたいと思ってる人は?」と聞くと、これもゼロ。
みんな口々に、「川村先生と相談してからじゃないとわからない」。
そりゃそうだ。みんなまっとうな考え方をしている。
どんな薬を飲むことになるかについては主治医にかかっている。当事者が判断するには情報があまりにも乏しいし、判断しない方がいいかもしれない。
そこで、メディアン取材班は、診察に行ったついでに川村先生(浦河日赤病院精神科部長・精神科医)にいろいろ聞いてみた。

川村先生の考えは以下の通り。
・患者の希望があればジェネリック薬を処方する。
・先生からはどちらにするかの選択は行わないし他の後発薬に対しても同じ考え。
・後発メーカーは「同じ効果」と言うだろうし、先発メーカーは「違う」と言うだろう。
・リスパダールはいい薬。

では、そもそも浦河の薬局でジェネリック医薬品は買えるのかという疑問が浮かび、「めぐみ薬局」へ突撃取材。
対応してくれたのは、曽田恵美子薬剤師。
べてるのことも昔からよく知っていて、みんな頼りにしている。

「リスパダールのジェネリックはおいてますか?」と聞くと、「ない」とのこと。
かろうじて、ワイパックス(ロラゼパム)のジェネリックはあった。



めぐみ薬局の曽田恵美子薬剤師

「後発薬は患者の要望があり、先生が認めなければ浦河日赤では処方されません。また、精神科のジェネリック医薬品に対しては少し難しいところがあります。ジェネリック医薬品は、その先発薬が何に効くのかという効能などが複数ある場合、後発薬ではその扱いが難しいのです。薬局としては、医師が言わんとしている事が処方箋からでは判断が難しく、説明できない事もあります(薬局は医師の『後発薬可』の処方箋を受けてジェネリック医薬品を処方する場合、30分程度説明をしなくてはならないらしい)。川村先生の薬に対する考え方は世界初です。その人に合う薬を見つけて、可能なかぎり少なく処方し、地域で暮らすことを望んでいます。先生、患者、ソーシャルワーカーの信頼があるので、薬局はそれを見守っています。」(曽田恵美子さん)

とういうふうに、とても親切に教えていただきました。ありがとうございました。
川村先生の薬の考え方は世界初だそうです。(笑)

いずれにしても、今回いろいろと調べてみて、知らない事ばかりで驚きだった。


—結論

ジェネリック薬品の普及は、良い事であり、将来的には欧米並みなることを望む。しかし、それは国の厳正な審査によって患者にとっての安心・安全が担保されていることが前提。薬剤の専門家や現場の薬剤師がその効果や品質に疑問を持つようなものを流通させていては、結果的にジェネリック医薬品へのイメージを悪化させ、医療費の削減効果がいつまでも期待できないばかりか、「ジェネリック薬」という医療費抑制のための選択肢そのものを潰してしまう可能性がある。
これからの、お薬の専門家の方々と、厚生労働省の担当の方々に期待したい。


記事:McMedian、浦河取材:岩田めぐみ(統合失調症フワフワ型)

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