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日本グループホーム学会 in 北海道 講演
2007年7月7日・8日
「安心して絶望できる人生」向谷地生良×清水里香
向谷地生良 ただいまご紹介いただきました向谷地です。
今職場は札幌の郊外にある北海道医療大学の臨床福祉学科の教員を4年前からしています。一方で、浦河町という襟裳岬の近くにある小さな町の病院のソーシャルワーカーをやっていまして、浦河と札幌を行ったり来たりの往復の生活をしています。今回のテーマとして頂いた「安心して絶望できる人生」というのは、昨年の11月にNHK出版から出させて頂いた本のタイトルで、さりげなく本のPRをさせて頂き感謝します。それでは今日お話してくださる清水里香さんから簡単に自己紹介して頂きます。
清水里香 みなさんこんにちは、清水里香といいます。
8年前に浦河に来ました。自称、統合失調症のサトラレ系です。
人に心を読まれてしまうのが辛くてずっと地元にいるとき引きこもっていたんですけれど、浦河に来ても順調に引きこもりながら講演にでたりテレビに出たりして施設長の仕事をするようになって4年前から当事者スタッフとして浦河べてるの家で働いています。今日はよろしく
お願いします。
向谷地 私たちのスタイルはこんな風に、講演なのか井戸端会議なのか分からない、行き当たりばったりな感じですがどうぞよろしくお願いします。
清水さんも講演とかいろいろな場面に登場する事が多いですよね。
清水 はい。そうですね。
向谷地 清水さんはなんと言っても忘れられないのが、浦河に現れた8年前ですよね。
清水 ちょうど8年前ですね。
向谷地 8年前入院して間もなくテレビに出たんですよね。1ヵ月くらいじゃなかった?
清水 そうですね。それまで長いこと地元で引きこもっていてTVに出るどころか、家族以外の前には姿を出したことがなかったので、いきなりのテレビ出演だったんです。だけどその時入院してたんです。それで事前に取材を受けて放送は病室で見ました。夜の11時ぐらいに特別に見せても
らえて。
向谷地 たまたま筑紫さんが浦河に来て、ニュース23を浦河から生中継したんですね、そのニュース23はべてる特集でそれに清水さんが出ることになった。
清水 そうですね、出ました。
向谷地 あの時は忘れられないですね、というのは清水さんは基本的に他人を避けてずっと引きこもっていた。7年間引きこもって、それでもまだいろいろと人と触れ合うことが煩わしくて北海道の浦河に来たら誰も人がいないんじゃないかと思って来たって聞きましたけど。
清水 はい、安心して引きこもれるんじゃないかと思って、サトラレも誰も私のことなんか気にしないでゆっくり引きこもれるのかなぁって。家(栃木)にいたらサトラレがひどくなると思って、田舎の方がよかった。地図を見たらすっごい田舎にあったんでこれは浦河に行こうと思って浦河に来たんです。
向谷地 引きこもりに来たんですよね。そして入院したんですけどね。
清水 はい。
向谷地 清水さんが入院した時、忘れられないのは主治医の川村先生がニコニコして、「向谷地君、すごいスターが来たぞ」って。
清水 (笑い)
向谷地 「面白い人が入院してきた。栃木から引きこもりに来たぞ」ってね。で、入院して病室行ったらね、なんかあの頃一日中泣いてなかった?
清水 泣いていました。
向谷地 病室でメソメソ泣いてね。入院したての清水さんは、そんな状態だったんですけれども、たまたま「ニュース23」で取材に来ていたTBSのプロデューサーと話していた時に、「清水さんっていう面白い人が最近入院してきたんですよ」という話をしたら「お話を聞いてみたい」ということになって、清水さんに取材が舞い込んだんですよね。
清水 そうですね、浦河に来てから私の話を聞いてくれる人が結構増えて精神科の先生だとかソーシャルワーカーだとか本当に私の話を聞いてくれる人たちが現れて、さらに私の話を聞いてくれるっていうプロデューサーが登場して、病院の喫茶店に行って2時間以上話しました。本当に「立て板に水」のように次から次へと言葉が出てきて。
向谷地 話したよね。
清水 話しました。1時から夕方になるぐらいまでずっと話していました。
向谷地 ずっと、話し続けてね。忘れられないのが、「向谷地さん、私引きこもりだと思っていたけど違った。私、出たがりだったんだ」という言葉だね。そうだ清水さんは出たがりだったんだ。そうか、引きこもりの人って実は出たいんだ。出たがってるんだということがわかったね。
清水 そうですね、引きこもりの人って自分を知って欲しいと思ってる人って多いんじゃないかなと思ってます。
向谷地 それじゃあ、清水さんのプロフィールを紹介してもらいましょうか。
清水 はい。私は23歳の時に統合失調症を発病したんですけども、「自分の考えてることが他人に伝わっているという噂が伝わってくる」という異変がおきるようになりました。その頃から職場でちょっとしたいじめがあって、それから仕事を一生懸命やってそれを我慢して家に帰ると開放されてホッとしてたのに、急にそのいじめてる人達の声が、私がお風呂に入ろうが寝てようがトイレに入ってようがずっと頭の中から聴こえてきて止まらなくなって、ずっと監視されてるような感じだったんですよね。
そうしたら、息つく暇が無くて、ホッとする場所が無くて、緊張が止まらなくて過呼吸で倒れちゃったんです。
さらに親の声が聴こえてきてもう辛くて仕事が困難になって辞めてしまいました。その時は自分が病気になった自覚は十分ではなくて、サトラレになってしまったと思って、病気の話をしたくて精神科に受診したんです。
こんな事が起こってしまいましたって。それでどうにかなると思ってもいなかったんですけども精神安定剤を飲みながら7年間地元に居て30歳の時に浦河に来ました。
向谷地 清水さんは薄々もしかしたら自分は精神科の病気にかかってしまったのではないだろうかということも少しは心配も自覚もあったの?
清水 病名のつく病気だと思っていなかったんですけれども、精神科が必要かなは思ってました。
向谷地 病院にはかかりにくい病気だよね、精神科は。
清水 そうですね。でも「行った方がいいよ」と親戚の人にも言われ、どんな所なんだろうと興味もあったから行ってみようかなという感じで興味本位で行ってみたんですよね。
向谷地 浦河ではよく自己病名というのをつけるんですよね。お医者さんからもらった病名じゃなくて自分の感覚で納得できる病名ってつけるんですけれども、清水さんの自己病名は?
清水 「統合失調症サトラレ系」ですね。
向谷地 統合失調症サトラレ型。
清水 そうですね。
向谷地 俗に「サトラレ」という自分の考えていることがみんなに伝わってしまうという大変さっていうのは、もし自分達に起きたら大変だろうなと思うんですけども実際どんな感じなんですか?
清水 はい。もうプライバシーはないんですよね。何を考えても何を感じても何を見ても何をしても全部伝わってしまう。自分の腸の動きから何から全部伝わってしまう。だから恥ずかしさったら道の真ん中でトイレしているくらいの恥ずかしいんですよね。自分が考えている全てを洩らしてしまう。
向谷地 究極の個人情報の漏えいですね。
清水 そうですね(笑)
向谷地 清水さんは幻聴さんも活発に聴こえてくるんですよね。
清水 そうですね。ワイワイ騒いできて。
向谷地 それと、頭の中で人が騒いでいるんですよね。某家族が。
清水 バイトで働いていたら(頭の中で)家族が騒いでて。
向谷地 頭の中で住みついている感じですか?
清水 そうですね。
向谷地 一家は何人ですか?
清水 3人です。
向谷地 3人家族が頭のどの辺に居るんですか?
清水 最近はしないんですけれど、ウォークマンありますよね?ウォークマンが耳の辺りで聴こえるでしょ?それと同じようにホワーンと。
向谷地 家族の話し声が?
清水 叫び声だったり、話し声だったり、喧嘩している声だったり・・・。
向谷地 幻聴さんも夫婦喧嘩するの?
清水 します。親子喧嘩もします。
向谷地 自分が仕事している最中に頭の中の某家族が夫婦喧嘩を始めたらどうするんですか?
清水 仕事に集中出来なくなってくるんですよね。
向谷地 仲裁に入る?
清水 仲裁に入ろうとするんです。そうするとドッと疲れるんだけど仲裁に入った私の心の中言葉を聞いてまた向こうが反応して返してくるから、なるべく考えないようにしますが、頭の中で喧嘩されるから無視するのも難しいんですよね。
向谷地 日本中でね、仕事しながら夫婦喧嘩の仲裁をしているのは清水さんだけだと思うんですけど。
清水 (笑)
向谷地 清水さんが面白いのは頭の中で家族が喧嘩したりするもんですから、私が清水さんに「今日の家族は元気にやってる?」と聞いたら家族にも個人情報保護が適用されるということで、幻聴さんにもプライバシーがあると聞いて私はこけたんですけどもね。そういうリアルな世界にいるんですよね?
清水 そうですね。リアルですね。
向谷地 こういう自分の世界の出来事については、浦河に来る前は主治医に話していました?
清水 いいえ。詳しくは話さないです。精神科に入院させられて、退院できないと困ると思っていたし、私は統合失調症ではないと思っていましたから、聴こえるけど「気になりません」とか、「どれ位の感じで聴こえますか?」と言われても「時々聴こえますが全然気にしてません」って。凄い気にしているし、凄いバンバン聴こえているけど我慢して「独り言は言いますか?」と聞かれたら「一人の時はブツブツ言うかもしれないけど人前では言いません」とかそんな感じの事を言っていました。正確な事を言ってなかったからかもしれないけど。
向谷地 大体、統合失調症を診てる精神科医は正直に病名を伝えている割合は半分あるかないか、それくらいの割合だと聞いたことがありますが。
清水 そうですね。
向谷地 清水さんは当時の主治医に自分の事を何割くらい話していましか?
清水 お医者さんも薬の事しか聞かないし、こういう時どうしてつらいのかとか、そういうことは話すところが無かったんですよね。たまりにたまって両親に話しても「お前の言っていることはさっぱり分からない」と言われてしまう。診察時間は5分くらいしかないし、私が「山田家」の話をしたら1時間も2時間も掛かってしまうからね。(笑)
向谷地 幻聴さん家族ね。山田家の住人は羨ましいですね。
清水 こんな事を聞いてくれる先生はいないし、だから聴こえるかどうかって確認はされたけど中身まで聞いてくる人はいなかったですね。
向谷地 ということは、あんまり中身まで聞いちゃダメだという考え方もあるみたいですね。
清水 べてるに来てからは、「べてるはそういうことを話すけど、どうなんですか?」と専門家の人たちが見学に来る時にそこのところを聞かれますね。
向谷地 特に看護師は少し変わってきているかもしれないですね。看護師はあまり聞いちゃダメだって教育されているみたいだからね。
清水 やっぱり浦河のやり方というのは1対1で幻聴さんの世界を十分に聞いて、幻聴さんの世界を肯定して型にはまるってことはあまりないんですよね。
特に当事者研究は、起きている問題を「外在化」して幻聴さんを中心に置いて、みんなでワイワイと話し合う。すると、幻聴さんとどっぷりつき合ってる自分と、それを遠目で見ている自分が見えてきて、幻聴さんとの関係や状態がだんだん見えてくる。
そういうつき合い方をしていると、幻聴さんに困っている清水里香に対して、相手にそれをどういう風に知って欲しいのかということを第三者の目で伝えることができるのです。
でも引きこもっていた7年間は本当につらかった。どうして自分がこんなにつらいのか、わからないぐらいつらかった。自分のことが分からないということが現実の苦しんでる自分を混乱させていました。
向谷地 自分の中に何が起きているか分からないっていうのは一番大変なんだよね。
清水 そうですね。それはすごくわかります。
