続「技法以前」No.58「共に回復する」 向谷地生良


べてるの家のメールマガジン「ホップステップだうん!」Vol.073が本日発行されました。


 

今号の内容は、、

・続「技法以前」58 向谷地生良  「共に回復する」

・第10回 統合失調症学会シンポジウム
「統合失調症におけるリカバリーの実現と当事者研究」まとめ

・べてるまつり&当事者研究全国交流集会のお知らせ


 

続「技法以前」58 向谷地生良  「共に回復する」
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新しい年度がはじまりました。今年のスタートを一つの単語で表すなら
ば、先週の第10回統合失調症学会に参加してあらためて再確認したの
は「協同」というキーワードです。英語で言うと接頭辞の「CO−(コ)」
で表現される「いっしょ、相互」です。

それを可能とするもう一つの大切なキーワードは「無力」と「無知」で
す。大切なのは、当事者研究でいう「前向きな無力さ」です。

従来は、医師を頂点とした専門家の力が優位で、病気や障害をかかえる
人を弱者として引き上げる構図が長く続きました。しかし、精神保健福
祉領域でいうと、薬物療法の限界が明らかになり、エビデンスがあると
言われてきたSSTをはじめとする心理教育の普及とその効果が思った
以上ではなく(リバーマン)、分子生物学で期待された遺伝子レベルで
の統合失調症の病因究明も壁に直面している(糸川昌成)ことが明らか
になってきた中で、今回の学会のポイントは三つあります。

ひとつは、ロンドン大学客員教授のGeoff Shepherd氏の講演「統合失
調症における効果的な支援体制-組織変更の重要性」のタイトルにある
ように、統合失調症を持つ人たちのリカバリーを実現する上で、大事な
ことは治療やサービスを提供する体制の変革と専門家の態度変更である、
と主張されたことです。

ふたつ目は、学会理事長である丹羽真一先生が「当事者研究は日本初の
世界先端のアプローチである」と題して講演したことです。
その後に持たれたメンバーの研究発表と併せて、これは、「当事者の力」
の重要性と協同の大切さを説いたという意味で、我が国の統合失調症治
療や支援の歴史的な転換点になるのではないかと思います。

圧巻だったのは、大会長である糸川昌成先生(都総医研)「脳と心 ‐脳
の部品を研究してみて‐」です。統合失調症を、壊れた部品を特定し、修
理するという発想の限界と、人として共に回復するという可能性をお母
様が統合失調症であった先生自身の「リカバリー」の物語を軸に語るこ
とを通じて、人が「病むこと」と「回復」の大切な視点を見事に描き出
し、深く感動させられました。

統合失調症治療と支援の世界に、確実に地殻変動が起きていることを実
感した学会でした。

その底流に流れたいるのが、先に述べた「前向きな無力さ」です。前向
きな「無知」と「無力さ」の自覚が、協同を促し、そこに「共に回復す
る」という新しい可能性を生みだすのです。

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向谷地生良
1978年から北海道・浦河でソーシャルワーカーとして活動。
1984年に佐々木実さんや早坂潔さん等と共にべてるの家の設立に関わ
った。浦河赤十字病院勤務を経て、現在は北海道医療大学で教鞭もとっ
ている。『技法以前』(医学書院)、『安心して絶望できる人生』(N
HK出版)、『べてるの家から吹く風』(いのちのことば社)など著書
多数。


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